レッスン 5: スライド(Sliding)デフォメーションの設定
 
 
 

これまでに、脚のメッシュに対して機能するマッスルのリグを設定しました。スライド(Sliding)ウェイトを使用すると、マッスル スキン デフォーマでさらに精度の高いリギングが得られます。このデフォーマを使用すると、肌の下を滑らかに動く実際の筋肉とボーンを表現できます。後半のレッスンで作成するリラックス(Relax)ウェイトと一緒に使用すると、非常に効果的なスキンの押し出しとスライドの効果が得られます。

チュートリアル ファイルをロードする

  1. 前のセクションのファイルを使用するか、tut_dragonLeg_sliding_START.ma をロードします。

    このファイルには、スティッキー(Sticky)ウェイトを使用してボーンとマッスルにスキンとウェイトが正しく設定された脚が収められています。

スライド(Sliding)デフォメーションを有効にする

  1. スキン メッシュを選択し、チャンネル ボックス(Channel Box)の入力(INPUTS)セクションで、cMuscleSystem1 ノードをクリックして、そのアトリビュートを表示します。

    デフォーマの各メイン セクションは、ラベルのヘッダで分類されています。ここでは、スライド(SLIDING) セクションに表示されるものを使用します。スライド(Sliding)デフォーマはオン/オフの切り替えが可能です。これにより、動作や再生を高速化できます。

  2. スライドの有効化(Enable Sliding)をオンにし、精度(quality)は「フル」のままにしておきます。

    後から必要に応じて精度アトリビュートを調整できます。精度アトリビュートの詳細については、 スライダ アトリビュートを参照してください。

スライド(Sliding)ウェイトをペイントする

最初にヒップの肩胛骨にウェイトをペイントします。

  1. スキン メッシュを選択し、 マッスル > マッスル ウェイトのペイント(Muscle > Paint Muscle Weights)を選択してマッスル ペイント(Muscle Paint)ツールを開きます。
  2. ウェイト(Weights) プルダウン メニューからスライド(Sliding)を選択します。
  3. ウェイト(Weight)スライダを 1.0 に設定し、置き換え(Replace)モードをオンにします。
  4. インフルエンス(Influence)リストで、「boneBlade」を選択します。
  5. 肩胛骨が押し出される可能性のある周囲の領域をペイントします。

    ヒント:ボーンの周囲の領域だけをペイントすると高速化できるうえに、メッシュのその他の部分のポイントが肩胛骨によって飛び出したり押し出されたりすることがありません。

    ペイントしながら、スライド デフォメーションが発生し始めるのを確認できます。ボーンに関連するメッシュの詳細が不十分なため、スライドは正確というわけではありません。これは、小さいまたは薄いボーンやマッスルにスライドが発生する領域のスキンの詳細が必要となる良い例です。

脂肪オフセットを設定する

スライド時にマッスルやボーンがスキンを貫通することがよくある領域では、脂肪(Fat)値を設定してマッスルまたはボーンとスキンとの間にオフセットを作成できます。

各マッスルまたはボーン オブジェクトに対する cMuscleObject シェイプ ノードの脂肪アトリビュートにより、スライド時にスキンからマッスルまたはボーンへのオフセットを調整できます。

多くの場合、スキンが後面のマッスルを貫通するため、MusHipBack マッスルが良い例となります。下のイメージは、スライド(Sliding)ウェイトがペイントされたマッスルと、0.55 に設定されたマッスルの脂肪オフセットを示します。

スキン メッシュから肩甲骨へのオフセットを定義するには

  1. 肩胛骨のオブジェクトを選択します。
  2. アトリビュート エディタ(Attribute Editor)で、「cMuscleObject_boneBlade1」タブを選択して、肩胛骨の cMuscleObject シェイプ ノードのアトリビュートを表示します。
  3. 脂肪(Fat)値を 1.0 に設定します。

    これでスキンが肩甲骨からオフセットされました。

スライド(Sliding)は少数のポイントにのみ作用するようになり、少しシャープになります。スライドが原因でマッスルに自己貫通が発生する場合があります。方向(Direction)ウェイトと呼ばれる別のスライド機能を使用して、スライドの発生方法を改善できます。

Direction ノードを作成する

  1. 何も選択されていないことを確認し、マッスル ペイント(Muscle Paint)ツールを閉じてから、 マッスル > 方向 > マッスル方向の作成(Muscle > Direction > Make Muscle Direction)を選択します。

    デフォルトでは、ベクトル タイプの Direction ノードが原点に作成されます。このノードには、マッスル スキン デフォーマに接続してからスライド(Sliding)が動作する方向を示す矢印があります。

    この場合は、何も選択されていないため、新しい cMuscleDirection シェイプ ノードが作成されます。

    ヒント:メッシュの中心線に基づいて放射状の Direction ノードを作成する場合が多く、カプセルは一般的に中心線に沿ったボーンに使用されるため、任意のカプセルを cMuscleDirection ノードとしても機能するように簡単に変換できます。カプセルを選択し、 マッスル > 方向 > マッスル方向の作成(Muscle > Direction > Make Muscle Direction)を選択します。カプセルは、カプセルと放射状のマッスルの方向の両方に同時に変換されます。これで、カプセルのマッスル オブジェクトとして、または、マッスルの方向として、カプセルをデフォーマに接続でき、両方の方法でこれを使用できます。
  2. チャンネル ボックス(Channel Box)またはアトリビュート エディタ(Attribute Editor)で、cMuscleDirection ノードのタイプ(Type)アトリビュートを放射状(radial)に設定します。

    これにより、軸に沿った放射状タイプの押し出しが作成されます。長さ(Length)減衰外側(Falloff Outer)アトリビュートは、この軸の長さをコントロールします。

    次に、方向オブジェクトをマッスル デフォーマに接続します。

Direction ノードを接続する

  1. 方向オブジェクトとスキン メッシュを選択します。
  2. メイン メニューから マッスル > 方向 > 選択したマッスル方向を接続(Muscle > Direction > Connect selected Muscle Directions)を選択します。

    方向オブジェクトが接続されますが、メッシュに目に見える変化はありません。これは方向ウェイトのペイントが完了していないためです。

  3. 方向オブジェクトを移動して背面のヒップのマッスルに揃えます。
  4. それを 1 番目のヒップ マッスルの立方体ムーバにペアレント化します。

  5. 長さ(Length)アトリビュートを 3.0 に設定します。

    減衰外側(Falloff Outer)アトリビュートは 1.0 に設定したままにします。これは先端の長さを変更するだけです。Direction ノードの実際のエフェクトが生成されるのは、ウェイト付けだけです。減衰内側/減衰外側(Inner/Outer Falloff)の値は主に視覚的なフィードバックに使用します。

方向(Direction)ウェイトをペイントする

  1. スキン メッシュを選択し、 マッスル > マッスル ウェイトのペイント(Muscle > Paint Muscle Weights)を選択します。
  2. マッスル ペイント(Muscle Paint)ツールで、ウェイト(Weights)プルダウン メニューから方向(Direction)を選択します。

    これにより、接続された任意の Direction ノードに方向(Direction)ウェイトを設定してペイントできます。

  3. ヒップ マッスルのスライド(Sliding)をペイントしたのと同じ領域にある方向ウェイトをペイントします。

    これでスライド(Sliding)方向がマッスルの Direction ノードの中心線から放射状に押し出されるように補正されました。貫通の問題も解決しました。

  4. タイムラインをスクラブして、アニメーションを確認します。
  5. チャンネル ボックス(Channel Box)の入力(INPUTS)セクションで、cMuscleSystem1 ノードをクリックします。
  6. スライドの有効化(Enable Sliding)オプションのオン/オフを切り替えて、スライド(Sliding)の有効/無効によるメッシュの表示内容を比較します。
  7. 必要に応じて、引き続きスライド ウェイトをペイントしてベクトルまたは放射状の Direction ノードを作成するか、tut_dragonLeg_sliding_END.ma を開きます。

レッスンを終えて

このレッスンでは、以下について学習しました。